障がい者就活の基礎知識

障がい者雇用の職種10選とおすすめ企業|データで見る仕事と賃金

2026.10.06 蒲原雄介 30分で読める

「自分にできる仕事なんてあるんだろうか」

障がい者雇用で仕事を探すとき、多くの方がこの不安を抱えます。

ところが厚生労働省の調査を見ると、意外な事実が浮かび上がります。障がい者を雇用する企業の約8割が、「会社内に適当な仕事があるか」を最大の課題に挙げているのです。つまり、悩んでいるのは求職者だけではありません。

この記事では、公的データをもとに「実際にどんな職種で、どれくらいの人が、いくらで働いているのか」を正確にお伝えします。イメージや印象ではなく、事実から仕事を考えてみてください。

目次

この記事でわかること

  • 障がい種別ごとに、実際に多い職種とその割合(公的データ)
  • 賃金を左右するのは「職種」ではなく「労働時間」という事実
  • 企業が障がい者雇用で本当に困っていること
  • 職種が決まらないときの3つの進め方

障がい者雇用で実際に多い職種とは

まず、実態を数字で確認します。

以下はすべて、厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」(2024年3月公表)にもとづくものです。この調査は5年に1度実施されるものです。

調査時点で、従業員5人以上の事業所に雇用されている障がい者は110万7,000人。前回調査(2019年度)から25万6,000人増えました。

障がい種別ごとの職業別ランキング

障がいの種別によって、就いている職種は大きく異なります。

順位 身体障がい 知的障がい 精神障がい 発達障がい
1位 事務的職業
26.3%
サービスの職業
23.2%
事務的職業
29.2%
サービスの職業
27.1%
2位 生産工程
15.0%
運搬・清掃・包装等
22.9%
専門的・技術的職業
15.6%
事務的職業
22.7%
3位 サービスの職業
13.5%
販売の職業
16.8%
サービスの職業
14.2%
運搬・清掃・包装等
12.5%
4位 専門的・技術的職業
11.7%
生産工程
16.6%
運搬・清掃・包装等
11.1%
販売の職業
9.5%
5位 販売の職業
7.2%
事務的職業
5.0%
生産工程
10.0%
生産工程
7.4%
6位 運搬・清掃・包装等
6.7%
専門的・技術的職業
2.3%
販売の職業
7.7%
専門的・技術的職業
5.8%

出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」

① 身体障がい・精神障がいは事務職が最多
パソコンを使った仕事が中心です。精神障がいのある方では29.2%と、約3人に1人が事務職に就いています。

② 知的障がい・発達障がいはサービス職が最多
清掃、飲食、店舗業務などが含まれます。知的障がいでは「運搬・清掃・包装等」も22.9%と高く、この2つで約46%を占めます。

③ 精神障がいでは専門的・技術的職業が2位
15.6%と、他の種別より高い割合です。ITエンジニアやデザイナーなど、専門スキルを活かす職種が含まれます。

5年前からの変化

前回調査(平成30年度)と比べると、大きな変化が起きています。

障がい種別 平成30年度の1位 令和5年度の1位
身体障がい 事務的職業 32.7% 事務的職業 26.3%
知的障がい 生産工程 37.8% サービスの職業 23.2%
精神障がい サービスの職業 30.6% 事務的職業 29.2%
発達障がい 販売の職業 39.1% サービスの職業 27.1%

身体障がいを除く3種別で、最多の職種が入れ替わりました。

精神障がいのある方は、サービス職中心から、現在は事務職が最多になっています。コロナ禍などによって、在宅勤務が広く普及したことと、無関係ではないでしょう。

どの種別でも1位の割合が下がっている点から選べる職種の幅が広がっていると読むことができます。

以前は、現場でも「障がい者雇用といえば定型作業」という前提が強くありましたが、企業側の受け入れ方が変わってきました。在宅勤務が当たり前になったことで、通勤や対人のハードルを理由に選択肢を狭める必要がなくなった方も多いと感じています。

産業別の傾向

どの業界で働いているかも、種別によって傾向が異なります。

障がい種別 1位 2位 3位
身体障がい 製造業 21.3% 卸売業・小売業 21.2% サービス業 14.9%
知的障がい 卸売業・小売業 32.9% 製造業 15.4% サービス業 13.2%
精神障がい 卸売業・小売業 25.8% 製造業 15.4% サービス業 14.2%
発達障がい 卸売業・小売業 40.5% サービス業 14.6% 製造業 10.2%

発達障がいのある方の40.5%が卸売業・小売業で働いています。スーパーやドラッグストア、量販店などが含まれ、求人数そのものが多い業界だと言えます。

主な職種10種|仕事内容と向いている人

ここからは、実際に求人が多い職種を具体的に紹介します。

厚生労働省の分類は「事務的職業」「サービスの職業」といった大きなくくりなので、実際の求人でよく見る職種名に置き換えて説明します。

1. 一般事務・データ入力(事務的職業)

書類作成、データ入力、ファイリング、電話対応などを担当します。障がい者雇用で最も求人が多い職種のひとつです。

求められること:WordやExcelの基本操作。ただし入社後に習得できる職場も多くあります。

働き方:在宅勤務の求人も増えています。デスクワーク中心で、体力的な負担は比較的小さい傾向です。

向いている方:決まった手順で正確に進めるのが得意な方。静かな環境で集中したい方。

2. 経理・人事アシスタント(事務的職業)

伝票処理、会計ソフトへの入力、勤怠管理のサポート、採用事務などを担当します。一般事務より専門性が高く、経験を積むとキャリアの幅が広がります。

求められること:簿記の知識があると有利ですが、未経験可の求人もあります。

向いている方:数字を扱うのが苦にならない方。ルールに沿って処理を進めるのが得意な方。

3. 清掃・メンテナンス(サービスの職業)

オフィスビル、商業施設、病院などの清掃業務です。作業範囲と手順が明確で、一人で黙々と進められる仕事が中心です。

求められること:特別な資格は不要なことがほとんどです。

働き方:早朝や夕方だけの短時間勤務も多く、生活リズムを整えやすい職種です。

向いている方:体を動かすのが好きな方。人との会話が少ない環境を望む方。

4. 軽作業・仕分け・梱包(運搬・清掃・包装等の職業)

倉庫や物流センターでの商品仕分け、ピッキング、梱包作業です。知的障がいのある方では22.9%とサービス職に次いで多い職種群です。

求められること:手順を覚えて繰り返す力。マニュアルが整備されている職場が多くあります。

向いている方:決まった作業を安定して続けるのが得意な方。立ち仕事に抵抗がない方。

5. 製造・組立・検品(生産工程の職業)

工場での部品組み立て、製品検査、加工作業などです。身体障がいのある方では15.0%と2番目に多い職種です。

求められること:集中力と正確性。座ってできる作業もあります。

向いている方:細かい作業が得意な方。品質へのこだわりを活かしたい方。

6. 販売・品出し・レジ(販売の職業)

スーパーやドラッグストアでの商品陳列、在庫管理、レジ対応などです。卸売業・小売業は障がい者雇用の受け入れが多い業界で、求人数も豊富です。

求められること:基本的な接客マナー。ただし品出しや在庫管理など、接客以外の業務に特化したポジションもあります。

向いている方:体を動かしながら働きたい方。地域で働きたい方。

7. 接客・店舗スタッフ(サービスの職業)

飲食店のホール業務、施設の受付、店舗スタッフなどです。

求められること:人と接する仕事なので、ある程度のコミュニケーションが必要です。

向いている方:人と話すことが好きな方。感謝の言葉をやりがいに感じる方。

8. コールセンター・カスタマーサポート

電話やチャットでの問い合わせ対応です。マニュアルが整備されており、在宅勤務の求人も増えています。

求められること:相手の話を聞く力。パソコン操作の基本。

向いている方:対面よりも電話やチャットのほうが話しやすい方。座って働きたい方。

9. IT・エンジニア(専門的、技術的職業)

プログラミング、システム運用、テスト業務などです。精神障がいのある方では「専門的・技術的職業」が15.6%と2位に入っており、この領域で働く方が一定数います。

求められること:専門スキル。ただし未経験から研修で育成する企業もあります。

働き方:在宅勤務との相性が良く、通勤負担を避けたい方の選択肢になります。

向いている方:特定分野に深く集中するのが得意な方。論理的に考えるのが好きな方。

10. デザイン・Web制作(専門的、技術的職業)

バナー制作、Webサイト更新、資料デザイン、動画編集などです。

求められること:デザインツールの操作スキル。ポートフォリオがあると有利です。

向いている方:手を動かしてものを作るのが好きな方。視覚的な表現が得意な方。

職種名で選ぶよりも、「その仕事のどの部分なら自分にできそうか」で考えることをおすすめします。同じ「事務職」でも、電話対応が中心の職場と、データ入力だけを任される職場ではまったく違います。求人票の職種名だけで判断せず、具体的な業務内容まで確認してください。

賃金の実態

「どの職種なら稼げるのか」は、誰もが気になるところだと思います。

結論として、賃金を大きく左右するのは職種よりも週の労働時間です。データで確認しましょう。

障がい種別ごとの平均賃金

障がい種別 平均賃金(月額) 平均勤続年数
身体障がい 23万5千円 12年2か月
知的障がい 13万7千円 9年1か月
精神障がい 14万9千円 5年3か月
発達障がい 13万円 5年1か月

出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」(超過勤務手当を含む月額平均賃金)

週の労働時間別の賃金

同じ調査で、労働時間別の賃金も公表されています。

障がい種別 週30時間以上 週20〜30時間未満 週10〜20時間未満
身体障がい 26万8千円 16万2千円 10万7千円
知的障がい 15万7千円 11万1千円 7万9千円
精神障がい 19万3千円 12万1千円 7万1千円
発達障がい 15万5千円 10万7千円 6万6千円

出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」(きまって支給する給与)

精神障がいのある方を例にとると、週30時間以上働く場合の平均は19万3千円。一方、週10〜20時間では7万1千円です。その差は約2.7倍になります。

たくさん働ける方は収入が増えるというのは、当然の傾向ですが、「どの職種を選ぶか」よりも先に、「週に何時間働ける体調か」を考えることが、収入設計の出発点になります。

労働時間と雇用形態の実態

障がい種別 週30時間以上の割合 正社員の割合
身体障がい 75.1% 59.3%
知的障がい 64.2% 20.3%
精神障がい 56.2% 32.7%
発達障がい 60.7% 36.6%

知的障がいのある方は週30時間以上働く割合が64.2%ある一方、正社員は20.3%にとどまります。フルタイムで働いていても非正規雇用というケースが多いことを示しています。

この点は、求人を見るときに意識しておくとよいでしょう。労働時間だけでなく、雇用形態と正社員登用の有無も確認してください。

なお、最初からフルタイムを目指す必要はありません。むしろ、無理をして体調を崩し、短期間で退職してしまうほうが長期的には遠回りになります。週20時間から始めて、慣れてきたら30時間へ。この段階的な進め方で安定して働き続けている方も、障がい者雇用の現場では多く見られます。

障がい者雇用に積極的な企業と、その職種

ここまで職種を見てきましたが、「実際にどんな会社が採用しているのか」も気になるところだと思います。

障がい者雇用に力を入れている企業には、いくつかのタイプがあります。それぞれで任される職種も異なるため、職種選びとあわせて知っておくと選択肢が広がります。

特例子会社とは

特例子会社とは、障がいのある方の雇用を前提に設立された子会社のことです。障害者雇用促進法にもとづく制度で、親会社が子会社を設立して一定の要件を満たすと、そこで働く障がい者を親会社グループ全体の雇用率に算入できます。

求職者にとってのメリットは、職場環境が最初から配慮を前提に設計されている点です。

  • 設備や作業手順が、働きやすさを考えて整えられている
  • 障がいのある社員が多数在籍しているため、理解のある環境がある
  • 支援担当者が社内に配置されていることが多い
  • 親会社の安定した業務を受託しているため、仕事量が安定している

一方で、親会社の業務を切り出して担うケースが多いため、職種の幅は会社によって大きく異なります。事務中心の会社もあれば、製造やIT中心の会社もあります。

【職種別】代表的な特例子会社6社

どんな職種があるのかを具体的に知るために、代表的な特例子会社を紹介します。自分が気になっている職種と照らし合わせてご覧ください。

会社名 親会社 主な職種 所在地
パーソルダイバース パーソルホールディングス 事務、清掃、カフェ業務、農作業、製造 東京都港区
みずほビジネス・チャレンジド みずほフィナンシャルグループ データ入力、書類電子化、印刷、封入発送 東京都町田市
NTTクラルティ NTT 一般事務、電話オペレーター、ヘルスキーパー 東京都武蔵野市
トヨタループス トヨタ自動車 部品組付け、清掃、オフィスサポート、看護助手 愛知県豊田市
ホンダ太陽 本田技研工業 部品組立、CADオペレーター、電子化、購買代行 大分県日出町
富士ソフト企画 富士ソフト オフィスサポート、Web制作、印刷・デザイン 神奈川県鎌倉市

各社の公式サイト掲載情報より作成(2026年10月時点)

事務・データ入力を希望するなら

みずほビジネス・チャレンジド株式会社(みずほフィナンシャルグループ)は、1998年設立の歴史ある特例子会社です。従業員465名のうち368名が障がいのある社員で、49名の定着支援コーディネーターが配置されています(2025年1月時点)。

業務は銀行のオンライン端末を使ったデータ入力、重要書類の電子化、帳票印刷、名刺印刷、メール集配など。人事・経理・総務といったバックオフィス業務もあります。はじめは有期契約で、勤怠状況などに応じて正社員へ移行する仕組みです。

パーソルダイバース株式会社(パーソルホールディングス)は、従業員3,210名のうち2,316名が障がいのある社員という大規模な特例子会社です。精神障がいのある社員が1,482名と全体の6割以上を占めるのが特徴です(2026年10月時点)。

PC事務職では、人材派遣の事務代行、求人原稿の作成・チェック、契約書のデータチェック、経理・人事関連業務などを担当します。完全在宅で週10〜30時間未満という雇用モデルもあり、通勤が難しい方や短時間から始めたい方の選択肢になります。

IT・専門職を希望するなら

NTTクラルティ株式会社(NTT)は、社員537名のうち416名が障がいのある社員です(2026年6月時点)。採用職種は「一般事務」「電話オペレーター」「ヘルスキーパー(企業内理療師)」の3つで、業務にはWebアクセシビリティ診断やホームページ制作も含まれます。

ヘルスキーパーは、あん摩マッサージ指圧師などの資格を活かして社員の健康管理を担う職種です。視覚障がいのある方が専門性を発揮できる仕事として知られています。

ホンダ太陽株式会社(本田技研工業)は、1981年設立。従業員396名のうち238名が障がいのある社員です(2026年4月時点)。募集職種には部品組立のほか、CADオペレーターやアノテーション、購買代行があり、CATIAを使った設計・解析や3Dプリンター造形といった専門業務も担当しています。2024年11月からは完全在宅での業務も開始しています。

製造・軽作業を希望するなら

トヨタループス株式会社(トヨタ自動車)は、愛知県豊田市に本社を置く特例子会社です。エンジン組付けライン、部品の整列・組付け・ピッキングといった製造系の仕事から、清掃、社内便の集配達、印刷・製本、看護助手(トヨタ記念病院)まで幅広い職種があります。

働き方の制度として、時間単位で取得できる年次有給休暇や、通院・行政手続きに使える障害者支援休暇(年5日)が設けられています。本社では短時間勤務からスタートする求人もあります。

Web制作・デザインを希望するなら

富士ソフト企画株式会社(富士ソフト)は、従業員386名のうち339名が障がいのある社員です(2026年4月時点)。内訳は身体55名、知的77名、精神207名と、精神障がいのある方が6割を占めます。

業務はオフィスサポート、名刺作成、Web制作、オンデマンド印刷、DMの封入封緘など。フレックスタイム制を導入しており、年間休日は125日です。大船駅からの送迎があります。

中小企業を探すなら「もにす認定」が目印になる

ここまで紹介したのは大手企業の特例子会社ですが、選択肢は大企業だけではありません。

厚生労働省には「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度」(通称:もにす認定制度)があります。障がい者雇用の取組が優れた中小事業主を、厚生労働大臣が認定する制度です。

制度の開始 2020年4月(障害者雇用促進法 第77条にもとづく)
対象 常時雇用する労働者が300人以下の中小事業主
認定企業数 全国623事業主(2026年6月30日時点)
評価の観点 取組(体制・仕事・環境づくり)/成果(雇用・定着・満足度・キャリア形成)/情報開示

出典:厚生労働省「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)」

評価は50点満点で、取組・成果・情報開示の3項目それぞれに最低点が設けられています。単に雇用率を満たしているだけでは認定されず、定着状況や社員の満足度、キャリア形成まで評価されるのが特徴です。

認定企業の一覧は厚生労働省のサイトで公開されています。地元の中小企業で働きたい方は、お住まいの地域の認定企業を調べてみるとよいでしょう。

厚生労働省:もにす認定制度 認定事業主一覧

就労継続支援A型事業所という選択肢

「いきなり企業に就職するのは不安」「まず働くリズムを取り戻したい」という方には、就労継続支援A型事業所という選択肢もあります。

A型事業所は、雇用契約を結んだうえで働ける福祉サービスです。最低賃金が保証されており、収入を得ながら実際の業務を通じて適性を確かめられます。一般企業への就職を目指す方の、準備期間としても機能します。

たとえば、精神・発達障がいのある方を対象とした就労継続支援A型事業所「プロセルワークス」では、Webクローリングやデータベース構築といったIT系の業務から、事務作業まで幅広い仕事に携わることができます。

実際に同事業所を利用し、その後グループ会社に就職した30代男性は、こう振り返っています。

「面接時に『いろいろなWebの仕事をしてみたい』と伝えたら、多くのWebに関わる仕事に挑戦させてもらえました」

「一人暮らしをしたいと思っていたので、収入を増やす必要があったんです。すると、私のスキルを活かせるようなポジションを用意して就職までサポートをしてもらえました」

職種が決まらないまま求人に応募するより、実際に働きながら自分の適性を確かめるほうが、結果的に近道になることもあります。

企業を選ぶときに見るべき3つのポイント

最後に、企業を選ぶときの視点を整理します。

1. 雇用率の高さより「職種が合うか」

障がい者雇用率の高い企業ランキングを目にすることがありますが、雇用率が高い=自分にとって働きやすい、とは限りません。

大切なのは、その企業に自分がやりたい職種・できる職種があるかどうかです。製造中心の特例子会社に事務職志望で入っても、希望する仕事には就けません。企業名ではなく、募集している職種から確認してください。

2. 配慮の「具体的な中身」を確認する

「障がい者雇用に積極的です」という言葉だけでは、実際の働きやすさはわかりません。確認すべきは具体的な制度です。

  • 短時間勤務から始められるか
  • 通院のための休暇制度があるか
  • 在宅勤務が可能か
  • 相談できる支援担当者が社内にいるか

今回紹介した企業でも、通院や行政手続きに使える専用の休暇制度を設けている会社、完全在宅の雇用モデルを持つ会社など、対応は大きく異なります。

3. 応募ルートを確認する

特例子会社の多くは、ハローワーク経由での応募を必須としている場合があります。公式サイトから直接応募できる企業もありますが、事前に確認が必要です。

どのルートで応募すればよいかわからない場合は、ハローワークの専門援助部門や、障がい者向けの転職エージェントに相談するとスムーズです。

※本章で紹介した企業は、公開情報にもとづく障がい者雇用の事例です。特定のサービスを通じて応募できることを示すものではありません。募集状況は各社の採用ページでご確認ください。

企業が本当に困っていること

ここからは、少し視点を変えて、雇う側の企業が何に悩んでいるのかを見てみましょう。

「会社内に適当な仕事があるか」が全種別で1位

同じ調査では、企業が障がい者を雇用するにあたっての課題も集計されています。

課題(1位) 身体 知的 精神 発達
会社内に適当な仕事があるか 77.2% 79.2% 74.2% 76.9%
障害者を雇用するイメージやノウハウがない 41.7% 51.6% 49.6% 49.7%
採用時に適性、能力を十分把握できるか 35.5% 40.0% 42.2% 42.9%

出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」(複数回答・課題があると答えた事業所における割合)

どの障がい種別でも、約8割の企業が「任せる仕事を用意できるか」で悩んでいます。

これは求職者にとって重要な意味を持ちます。企業は「障がいのある人を雇いたくない」のではなく、「どう仕事を切り出せばいいかわからない」のです。

そして2位の「イメージやノウハウがない」、3位の「適性、能力を十分把握できるか」も、同じ方向を向いています。企業は、あなたに何ができるのかを知りたがっています。

企業が実際に行っている配慮

一方で、雇用後の配慮は着実に広がっています。

障がい種別 最も多い配慮 2番目に多い配慮
身体障がい 休養への配慮 40.2% 通院・服薬管理等の配慮 38.3%
知的障がい 能力が発揮できる仕事への配置 51.1% 短時間勤務等の配慮 50.9%
精神障がい 短時間勤務等の配慮 54.3% 休養への配慮 50.9%
発達障がい 休養への配慮 61.2% 短時間勤務等の配慮 50.9%

出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」(複数回答可)

精神障がい・発達障がいのある方では、勤務時間と休養への配慮が上位を占めています。短時間勤務や休憩の取得は、多くの企業ですでに実施されている配慮です。遠慮せずに相談してよい内容だといえます。

求職者にとって何を意味するか

以上のデータから、「自分にできる業務」を具体的に説明できる人は、それだけで有利になります。

企業の約8割が「任せる仕事があるか」で悩んでいるのですから、「私はこういう業務ならできます」「この部分を担当できます」と示せる求職者は、企業にとって答えそのものです。

たとえば「事務ができます」ではなく、次のように伝えられると説得力が変わります。

  • 「Excelでのデータ入力と集計が、1日◯件程度できます」
  • 「電話対応は難しいですが、メールでの問い合わせ対応は経験があります」
  • 「決まった手順の作業なら、長時間でも集中が続きます」

できることと、難しいこと。この両方を具体的に言語化しておくことが、職種選びと同じくらい重要です。

企業にヒアリングした際に、「仕事がない」と言われることはほとんどありません。正確には「切り出し方がわからない」のです。実際には、既存社員の業務の一部を取り出せば成立する仕事が、どの会社にも眠っています。求職者の方が「この部分なら担当できます」と提案できると、企業側の発想が動き出すことがよくあります。

職種を選ぶときの4つの視点

ここまでのデータを踏まえて、職種を選ぶときに考えたい4つの視点を整理します。

1. 週に何時間働けるかを先に決める

賃金データが示す通り、収入は労働時間に強く連動します。まず「無理なく続けられる時間」を決めて、そこから職種を考えるほうが現実的です。

通院の頻度、体調の波、服薬の影響などを考慮して、週20時間なのか30時間なのかを見極めてください。迷う場合は、少なめに設定して後から増やすほうが安全です。

2. 体調の波とどう付き合うか

体調に波がある場合、「波があっても成立する仕事」を選ぶ発想が有効です。

納期が厳密な仕事より、作業量を調整しやすい仕事。突発対応が多い仕事より、計画的に進められる仕事。この軸で見ると、職種の向き不向きが見えやすくなります。

3. 人との関わりの量を見極める

同じ職種でも、人と関わる量は職場によって大きく異なります。

  • 少ない:データ入力、清掃、軽作業、検品
  • 中程度:一般事務、経理アシスタント、品出し
  • 多い:接客、販売、コールセンター

人と話すのが負担なのか、むしろ励みになるのか。ここを正直に把握しておくと、ミスマッチを避けられます。

4. 通勤かリモートか

在宅勤務の求人は年々増えています。通勤そのものが負担になる方にとって、選択肢が広がったのは大きな変化です。

一方で、在宅勤務は自己管理の比重が高くなります。生活リズムを保ちにくい、相談しづらいといった側面もあるため、自分に合うかは慎重に考えてください。

企業の6割が「外部の支援機関」を求めている

最後に、もうひとつデータを紹介します。

「障害者雇用を促進するために必要な施策」を企業に尋ねた結果です。

障がい種別 1位 2位
身体障がい 雇入れの際の助成制度の充実 63.0% 外部の支援機関の助言・援助 58.3%
知的障がい 外部の支援機関の助言・援助 59.4% 雇入れの際の助成制度の充実 57.7%
精神障がい 外部の支援機関の助言・援助 62.5% 雇入れの際の助成制度の充実 58.1%
発達障がい 外部の支援機関の助言・援助 62.5% 雇入れの際の助成制度の充実 58.0%

出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」(複数回答)

知的・精神・発達の3種別で、「外部の支援機関の助言・援助」が1位でした。精神障がい・発達障がいでは62.5%と、6割を超えています。

さらに「関係機関に期待する取組み」では、全種別で「具体的な労働条件、職務内容、環境整備などが相談できる窓口の設置」が1位(身体35.0%、知的31.1%、精神29.8%、発達30.6%)でした。

つまり、支援機関は求職者だけのものではありません。企業側も、間に入ってくれる存在を強く求めています。

就労支援機関や転職エージェントを使うことは、遠慮すべきことでも、頼りないことでもありません。企業にとっても歓迎される選択です。

職種が決まらないときの3つの進め方

ここまで読んでも、「やっぱり何が向いているかわからない」という方もいると思います。それは自然なことです。

職種は、頭で考えるより試してみたほうが早くわかることもあります。3つの進め方を紹介します。

1. 就労支援事業所で実際に働きながら試す

就労継続支援A型事業所では、雇用契約を結んだうえで働きながら、自分に合う業務を探すことができます。最低賃金が保証されており、収入を得ながら経験を積める点が特徴です。

「事務作業が向いているか自信がない」「ブランクが長い」といった段階でも、実際の業務を通じて適性を確かめられます。就労移行支援(最長2年間の訓練)という選択肢もあります。

2. 転職エージェントに相談する

障がい者向けの転職エージェントは、キャリア相談から求人紹介、面接対策、入社後のフォローまで無料で支援してくれます。

「どの職種が向いているか」を一緒に整理してもらえるほか、求人票に書かれていない業務の実態も確認できます。まずは2〜3社に登録して、担当者との相性を比べてみるとよいでしょう。

3. 短時間から始めて広げる

最初から週30時間を目指す必要はありません。週20時間で始めて、働けると確信できてから増やす方法もあります。

実際、データを見ても精神障がいのある方の43.8%は週30時間未満で働いています。短時間勤務は特別な選択ではなく、一般的な働き方のひとつです。

職種を決められない方には、まず「やってみる」ことをおすすめしています。頭で考えて向き不向きを判断するより、実際に1日作業してみたほうが、はるかに正確にわかります。私たちの事業所でも、入所時に希望していた業務と、半年後に適性を発揮している業務が違っていた方は珍しくありません。

よくある質問

障がい者雇用で一番多い職種は何ですか?

障がいの種別によって異なります。厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」によると、身体障がいと精神障がいのある方では「事務的職業」(26.3%、29.2%)が最多、知的障がいと発達障がいのある方では「サービスの職業」(23.2%、27.1%)が最多でした。

障がい者雇用の平均給料はいくらですか?

月額の平均賃金は、身体障がい23万5千円、知的障がい13万7千円、精神障がい14万9千円、発達障がい13万円です(令和5年度障害者雇用実態調査)。ただし週の労働時間によって大きく変わり、週30時間以上働く場合は精神障がいで19万3千円、週10〜20時間では7万1千円と、約2.7倍の差があります。

未経験でも挑戦できる職種はありますか?

あります。一般事務、データ入力、軽作業、清掃、品出しなどは、未経験可の求人が多い職種です。また、特例子会社や障がい者雇用に慣れた企業では、入社後の研修制度が整っている場合もあります。IT系やデザイン系でも、育成前提の求人が存在します。

在宅勤務ができる職種はどれですか?

データ入力、一般事務、コールセンター、IT・エンジニア、Webデザインなどが代表的です。在宅勤務の求人は近年増加しており、通勤が難しい方の選択肢が広がっています。ただし企業や職場によって可否が異なるため、求人票で個別に確認してください。

障害者手帳がないと障がい者雇用枠では働けませんか?

障がい者雇用枠での応募には、原則として障害者手帳が必要です。ただし、申請中や取得予定の段階でも相談を受け付けている転職エージェントや支援機関があります。手帳をお持ちでない場合も、まずは相談してみることをおすすめします。

正社員になれる可能性はありますか?

あります。障がい種別ごとの正社員割合は、身体障がい59.3%、発達障がい36.6%、精神障がい32.7%、知的障がい20.3%です。最初は契約社員やパートから始め、実績を積んで正社員登用されるケースも少なくありません。応募時に正社員登用制度の有無を確認しておくとよいでしょう。

今は障がい者の求人は増えていますか?

増えています。厚生労働省「令和7年障害者雇用状況の集計結果」(2025年12月公表)によると、民間企業で働く障がい者は70万4,610人と過去最高を更新しました。とくに精神障がいのある方は前年比11.8%増と大きく伸びています。さらに2026年7月から法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられ、雇用義務の対象企業も従業員37.5人以上に拡大したため、採用ニーズは今後も高まる見込みです。

まとめ

障がい者雇用の職種について、公的データをもとに解説しました。最後に要点を整理します。

  • 最も多い職種は、身体・精神障がいでは事務的職業、知的・発達障がいではサービスの職業
  • 5年前と比べ、知的・精神・発達の3種別で最多職種が入れ替わり、選択肢が広がっている
  • 賃金を左右するのは職種より週の労働時間。無理なく続けられる時間から逆算する
  • 企業の約8割が「会社内に適当な仕事があるか」で悩んでいる。できることを具体的に言語化できる人は強い
  • 企業の6割以上が外部の支援機関を求めている。支援機関を使うことは歓迎される選択

「自分にできる仕事があるだろうか」という不安は、多くの方が通る道です。けれどデータが示しているのは、仕事がないのではなく、仕事の切り出し方がまだ見つかっていないだけという現実です。

ひとりで考え込まず、支援機関や転職エージェントに相談しながら、自分に合う働き方を一緒に探してみてください。

監修者

長谷川 裕樹
株式会社プロセルトラクション 代表取締役
就労継続支援A型事業所「プロセルワークス」代表

2008年、株式会社リクルート入社。多種多様な商材の営業・マーケティング業務や組織マネジメントを経験。福利領域の新規事業責任者を務めた際に、日本における社会福祉の課題に直面する。

その後、法人向け営業支援事業を展開する株式会社プロセルトラクションを設立。大手IT企業の障害福祉事業所向け業務支援ソフトの立ち上げ・拡大に携わるなかで、障害福祉における就労支援の課題を目の当たりにし、精神・発達障がいのある方を対象とした就労継続支援A型事業所「プロセルワークス」の開設に至る。

現在は、障がい者向け転職エージェント「プロセルチャレンジ」および同事業所を通じて、障がいのある方の就労支援に取り組んでいる。

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